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英世論調査結果に見るEU離脱の難しさ(大前研一)2017/08/23(水)

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今回のテーマ

英世論調査結果に見るEU離脱の難しさ(大前研一)

【中国経済、イタリア経済の最新動向】

 フィナンシャル・タイムズは18日、「中国、6.8兆ドルの『隠れ不良債権』か」と題する記事を掲載しました。イギリス、フィッチ・レーティングスのアナリスト、シャーリーン・チュー氏が最新のレポートで、中国の不良債権は公式統計の数字を6.8兆ドル上回るとの推計をまとめたことを紹介。中国政府が人為的に市場を安定させている一方、この状況は人々がありえないと思う規模の問題を生み出す危険性をはらんでいると警告しています。

 日本のGDPより大きな規模の隠れ不良債権があるという状況です。このシャーリーン・チュー氏はフィッチにいて、今は独立しています。こういう隠れ債権があるだろうと言っている人は多いのですが、数字を具体的に示し、このぐらいの規模の隠れ不良資産があるだろうとしました。

 やはりここから先の中国の経済運営は非常に危ういものとなって、日本で言うと1992年から1993年の状況にあるといえます。それを認めて95年になってくると、公的資金というものを投入し、銀行救済の段階に入ってくるのですが、中国は今、そういう状況の前夜であると言えます。

 フィナンシャル・タイムズは8日、「ようやく明るさが見えてきたイタリア経済」と題する記事を掲載しました。イタリアの4-6月期のGDP成長率は1-3月期の0.4%増に続き0.3%増を見込んでいます。ユーロ圏経済の回復を背景に、国内消費が拡大していること、大手銀行の事業再編で、金融業界への懸念が和らいだことが背景にあるということですが、これはイタリアの脆弱性が克服されたことを意味しないとする専門家の見方を紹介しています。

 イタリアのGDP成長率の推移を見ると、少し頭をもたげてきていることがわかります。失業率も現在は低下傾向で、若者の失業率は依然として高いままですが、少しは希望が持てるようになり、これでヨーロッパは随分と助かるわけです。ギリシャのめどがついた上に、イタリアは何とかなりそうだとなれば、これだけでもヨーロッパにとっては明るい話題と言えます。

【イギリス経済、フランス経済の最新動向】

 調査会社ORBが、イギリスの有権者を対象に実施した世論調査結果によりますと、EU離脱を巡るイギリス政府の交渉を支持しないとする回答が61%でした。

 私は前から述べているように、Brexitはできないと見ていますが、世論の方もだんだんと、交渉があまりにも難しいということで、もう一度国民投票をしたらどうなのかという方向に向かっています。今のテレサ・メイのやり方でのBrexitは支持しないと言う人が61%ということで、これはもう当然国民投票に行くべきでしょう。イギリス人はあまりにもこのあたりのやり方が鈍いと思います。

 私はかなり以前からイギリスで出版もし、BBCでもこのような内容を語っている数少ない一人です。テレサ・メイの内閣ができ、日本が一番心配だとして日本にやって来た大臣に対しても、これはやり直さなくては駄目だということを伝えています。イギリス人がようやくそこまで追いついて来たなという印象です。

 イギリス政府が16日、EU離脱後のイギリス領北アイルランドとアイルランドの国境について、現状通り物理的な境界を設けない方針を提案しました。パスポート検査なしに両国を自由に往来できる、共通通貨地域を継続するものですが、イギリスの良いとこ取りに対するEU側の反発は必死です。

 これは非常に難しい問題があります。イギリスから見たら、多くの人が北アイルランドとアイルランドの間の国境をまたいで通勤をしたり、買い物に行ったりしているという状況です。一方EU側から見ると、イギリスが離脱したらそこできちんと検問をしてくれないと困るということになるわけです。従ってEUとしてはそのような自由な通行などはさせられないと主張します。ところがそうなってきた時にはアイルランドのシン・フェイン党などカトリック系の政党は、それならば我々はアイルランドと一緒になりたいと言って昔の独立運動が再燃してしまうわけです。これはイギリスにとっては悪夢です。

 よって、これは今のイギリス政府が言っている通りにはならないでしょう。アイルランドの政党DUP議員が18人いるので、その力を借りてテレサ・メイはようやくマジョリティを維持している状況なので、解決策のない、どうしようもない状況になっていると言えます。

 問題となっているのはアイルランドとの国境でCTA(Common Travel Area)という区域に関する取り決めです。この取り決めが、イギリスとアイルランドとの間でも成り立っていて、これが危ぶまれている状況なわけです。EUの方は冗談じゃない、そこを塞いでくれと言うので、イギリスとしては動きが取れなくなるのです。そしてこれを追いかけていくと、やはりBrexitは止めようかという、一つの勢力になるのだろうと私は思っています。

 東洋経済オンラインは9日、「TGVもう作らない、フランス大統領が爆弾発言」と題する記事を掲載しました。フランスで7月2日、二本の高速線が開通し、マクロン大統領が式典で演説しました。マクロン氏は建設の主体となったフランス国鉄を讃える一方、次の5年間の目標は、TGV開業のような新たな大プロジェクトを起こさないことと強調。財政問題を念頭に、資金を投入する優先順位を見極めることや、在来線の老朽化問題に注力する考えを示したということです。

 マクロン氏の政策はあまりにも当たり前なので、人気が出ない状況になっています。支持率急落という情報もあります。やはり彼はやらなくてはいけないこと、つまりサルコジ氏やオランド氏の積み残しの部分で、甘いことばかりやってきたことに対し、財政規律を前面に打ち出しています。少なくともEUで決められている、GDPに対する3%以上の赤字は駄目だというような規律を守ろうとしているわけです。それにより行政各所で予算は削られ、一般市民から見ても、今までもらえていたものがもらえなくなったり、定年が伸びたりと、労働者の反発に繋がっています。

 マクロン氏は、サルコジ、オランドの甘いやり方に対して正しい事をやっているのです。EUのルール通り、つまりドイツの好むやり方をやっています。そしてそのことが人気下落の原因になっているのです。TGVのようなものよりも在来線が老朽化している対策を優先するのが当たり前だと言っているわけですが、それで人気が落ちるのです。やはりフランスの場合は、オランドのような嘘つきの方が、人気が出るということです。ただ結果的に何もできなかったので、マクロンが勝ったわけで、フランス人の記憶は短いのでしょうか。そこのところが特徴なのだろうと思います。ただ、テロが多く起きるので、兵隊にかかる費用も多くなっていることも事実です。

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 それでは、次回のグローバルマネー・ジャーナルもお楽しみに!

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